グッバイ イズニア


  • 01

    ───くそっ!化け物め!それが最後に聞こえた言葉だった。  目が覚めればどこかの森の中のようで。アーデンは重い体を起こしながら、瞼をこする。……どこだ、ここは。眠気を残しつつ、気だるげに周囲を見渡すも辺り一面、草と木と岩…

  • 02

    「で、さっそくなんだけど、これは何?」アーデンは目の前の、宙に浮く黄金色の物体を指差す。きらきらと光り宝石のようにも見えるが、なにぶん人の顔より大きい。『それはクリスタルの欠片だよ』『これから進んでいく道を教えてくれるし』『たくさん集めると…

  • 03

    『え~っと こっちだったかな?』そう言って前を進む白い生き物は右へ行き。『ん~ あっちだったかも』かと思えば今度は左へ行き。完全に迷子と言った体で二人は森の中を進んでいた。「…ねぇ、ここの出口、本当に知ってるんだよね?」始めは大人しく後ろを…

  • 04

    示された方角を白い生き物と共に進む。今度は迷いがないせいか生き物の歩みに淀みはなく、荒々しい岩肌はあっという間に再び柔らかな湿った土と生い茂る草へと変わり、どことなくアーデンを安心させた。「……でも、やっぱりこれは納得いかないよねぇ」絶対さ…

  • 05

    「……ところで」足元の白い生き物を持ち上げるとアーデンは根本的な問題を口にした。「この道で本当に合ってるんだよね?」道は確かに開けたものの。これが正解なのかと問われればアーデンは分からないと答えるしかなかった。正しい道を示すというクリスタル…

  • 06

    朝日が目に痛い。肩でぜぇぜぇと息をしながらアーデンはその眩しさに目を細める。結局、次から次へと湧いて出るナイトメアと一晩中戦わされ、こんな時間だ。『やったね アーデン!』いつの間にかどこぞへと隠れていた生き物がキュイ、と鳴きながらひょっこり…

  • 07

    ──落ちる、落ちる。全身を包む水の感触から、世界へと放り出される感覚。そしてぼよん、と何かの上に落下し、跳ねる感覚へ。「いたたた…」一体ここはどこだ。アーデンは着地した体を擦りながら周囲を見渡す。「なるほど。次の部屋…ねぇ、」まるでどこかの…

  • 08

    白い生き物を追いかけながらアーデンは辺りを物珍しそうに眺め、時折見つけたクリスタルの欠片を手に取り、集める。分厚い本に、巨大な羊皮紙。ワインボトルにペーパーナイフ。蝋封された大きな手紙に羽ペン、燭台、インク壺。大小様々なものを組み合わせ、よ…

  • 09

    とまぁ、そんな良い感じのことを言っていた生き物なのだが。その後、アーデンの「じゃあ、あのパネルじゃもうチョコボになれないんだよね?」の問い掛けにふと徒歩以外の移動手段を失ったことを思い出したのか『……! ああああっ…!』と羊皮紙に顔を覆うチ…

  • 10

    陽の下というのはこうも暖かいものだっただろうか。目深にかぶった帽子の陰でアーデンは小さく口角を上げる。冷ややかな空の下で見上げる星や月ばかりだったからよく思い出せない。だが、燦々と降り注ぐ陽射しも悪くないものだな、とそんなことを思いながらア…

  • 11

    ──少し昔話をしようか。愚かで実直で、本当は酷く酷く寂しがり屋だった男の話を。 ……男はルシスという国の第一王子として生まれた。ルシスというのはその昔、星が病み始め、争い、傷ついた神が眠りに就くとき指輪とクリスタルを授けた国のこと…

  • 12

    パラパラと頁を捲る音からやがてパタンと本の閉じる音へ。過去の幻影から現実へ。血腥い戦場から穏やかな陽射し差す書斎へ。「…っ、…俺、は……」『アーデン…?』ぼんやりと何かを見つめるようにアーデンはゆっくりと顔を上げ、虚ろげに呟いた。忘れていた…

  • 13

    ざぁざぁと雨の降る音。バラバラと雨粒が弾かれる感覚。トンネルを抜けた先、どこか哀愁を漂わせる雨のにおいにアーデンはゆっくりと瞼を押し上げた。『アーデン』目の前にあるジェラート屋の屋台の下で、先に進んでいた生き物はひとり雨を凌いでいた。濡れる…

  • 14

    街中に散らばってるクリスタルの欠片を集めながら、途中遭遇するナイトメアと戦いつつ、半強制的に行われるヒナチョコボとアーデンの地獄の鬼ごっこが開始して約半日──。勝率はなかなかと言ったところ……と言いたいところだが、今のところ捕獲したのはたっ…

  • 15

    四匹目はすぐに見つかった。というよりキューッキューッと激しく鳴くその声で気付いたというべきか。「え、ナイトメアに襲われてる…!?」ヒナチョコボの甲高い鳴き声に混ざり、ガルルル! ガウガウ…! と威嚇するナイトメアの低い吠え声。仲間を呼ぼうと…

  • 16

    ──そんなこんなで。アーデンの努力が実ったのか、ここの神様の仕事が早いのか。四匹目のヒナチョコボは広場を抜けるための階段を上りきったすぐのところで見つかった。……何故か茂みに頭を突っ込んで抜けなくなるという哀れな姿で。「なんでこんなところに…

  • 17

    アーデンがちゃんと着いてきているか、時折確認しながらヒナチョコボは進んでいった。ちょこちょこ歩いては振り向いて、遅れがないことを確認したらまた進んで。モニュメントの置いてある広場から階段を下って、いくつかの建物を横目で通り過ぎてはまた上って…

  • 18

    夜は明け、陽はまた昇る。どんなに永遠を望んでも、いずれ終わりはやって来る。現実の世界でも、夢の世界でも。それが時というものであり、世界が正しく回っている証拠なのだから。最後の花火を見納めて、水面から覗き始める目映くも暖かな光を見届けた後、ア…

  • 最終話

    きっと父王の剣に背を向けたときから。この勝敗は決まっていたのだろう。「終わったねぇ…王様……」地に倒れ伏したままアーデンは薄笑いを浮かべると、近付いてきた男に嫌みたらしく問いかけた。「……シガイを排除して…平和な世界を作るのか…?」ぽたりぽ…


    • Good night Ardyn

      グッバイ イズニアに収載した番外編その1。一般市民のプロンプトだから知っている話。

    • 約束の流れ星

      グッバイ イズニアに収載した番外編その2。未来の亡霊が過去で約束を叶える話。

    • 歴史の爪痕、王の墓標

      グッバイ イズニアの表紙(カバー裏)に書いた小説。

    • あとがき

      裏話という名の懺悔大会。