グッバイ イズニア

最終話

きっと父王の剣に背を向けたときから。この勝敗は決まっていたのだろう。「終わったねぇ…王様……」地に倒れ伏したままアーデンは薄笑いを浮かべると、近付いてきた男に嫌みたらしく問いかけた。「……シガイを排除して…平和な世界を作るのか…?」ぽたりぽ…

18

夜は明け、陽はまた昇る。どんなに永遠を望んでも、いずれ終わりはやって来る。現実の世界でも、夢の世界でも。それが時というものであり、世界が正しく回っている証拠なのだから。最後の花火を見納めて、水面から覗き始める目映くも暖かな光を見届けた後、ア…

17

アーデンがちゃんと着いてきているか、時折確認しながらヒナチョコボは進んでいった。ちょこちょこ歩いては振り向いて、遅れがないことを確認したらまた進んで。モニュメントの置いてある広場から階段を下って、いくつかの建物を横目で通り過ぎてはまた上って…

16

──そんなこんなで。アーデンの努力が実ったのか、ここの神様の仕事が早いのか。四匹目のヒナチョコボは広場を抜けるための階段を上りきったすぐのところで見つかった。……何故か茂みに頭を突っ込んで抜けなくなるという哀れな姿で。「なんでこんなところに…

15

四匹目はすぐに見つかった。というよりキューッキューッと激しく鳴くその声で気付いたというべきか。「え、ナイトメアに襲われてる…!?」ヒナチョコボの甲高い鳴き声に混ざり、ガルルル! ガウガウ…! と威嚇するナイトメアの低い吠え声。仲間を呼ぼうと…

14

街中に散らばってるクリスタルの欠片を集めながら、途中遭遇するナイトメアと戦いつつ、半強制的に行われるヒナチョコボとアーデンの地獄の鬼ごっこが開始して約半日──。勝率はなかなかと言ったところ……と言いたいところだが、今のところ捕獲したのはたっ…

13

ざぁざぁと雨の降る音。バラバラと雨粒が弾かれる感覚。トンネルを抜けた先、どこか哀愁を漂わせる雨のにおいにアーデンはゆっくりと瞼を押し上げた。『アーデン』目の前にあるジェラート屋の屋台の下で、先に進んでいた生き物はひとり雨を凌いでいた。濡れる…

12

パラパラと頁を捲る音からやがてパタンと本の閉じる音へ。過去の幻影から現実へ。血腥い戦場から穏やかな陽射し差す書斎へ。「…っ、…俺、は……」『アーデン…?』ぼんやりと何かを見つめるようにアーデンはゆっくりと顔を上げ、虚ろげに呟いた。忘れていた…

11

──少し昔話をしようか。愚かで実直で、本当は酷く酷く寂しがり屋だった男の話を。 ……男はルシスという国の第一王子として生まれた。ルシスというのはその昔、星が病み始め、争い、傷ついた神が眠りに就くとき指輪とクリスタルを授けた国のこと…

10

陽の下というのはこうも暖かいものだっただろうか。目深にかぶった帽子の陰でアーデンは小さく口角を上げる。冷ややかな空の下で見上げる星や月ばかりだったからよく思い出せない。だが、燦々と降り注ぐ陽射しも悪くないものだな、とそんなことを思いながらア…

09

とまぁ、そんな良い感じのことを言っていた生き物なのだが。その後、アーデンの「じゃあ、あのパネルじゃもうチョコボになれないんだよね?」の問い掛けにふと徒歩以外の移動手段を失ったことを思い出したのか『……! ああああっ…!』と羊皮紙に顔を覆うチ…

08

白い生き物を追いかけながらアーデンは辺りを物珍しそうに眺め、時折見つけたクリスタルの欠片を手に取り、集める。分厚い本に、巨大な羊皮紙。ワインボトルにペーパーナイフ。蝋封された大きな手紙に羽ペン、燭台、インク壺。大小様々なものを組み合わせ、よ…