獣は花の夢を見るかパロ 壱
……お母さん、僕、何も悪いことやってないよ……? ちゃんと言うこと聞いてるよ……? でも、さ、もう、さ、こんな、事――――……。 踏みしめていたコンクリートから踵を浮かせる。大丈夫、大丈夫、この小さな段差に足を掛け…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
ご近所さんの話 伍【大人夜と子昼でハロウィン】
「本当にお母さん、付いて行かなくても大丈夫?」「うん、平気だよ! 夜が誘ってくれたんだから危ないことはないでしょ? そんなに心配しないでよ」「ふふ、それもそうね。みんなも一緒だし危ないことなんて無いわよね。それじゃあ、みんな気を付けて行って…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
ご近所さんの話 肆【大人夜と子昼、時々鴆】
主はとても気紛れだ。それは猫のように、風のように、機嫌一つ、思惑一つで相手をあれやこれやと弄ぶ。珍しく差し出されたその白き手さえ、如何に鴆が恭しくいただき舌を這わそうとも眉一つ動かさず受け入れていたというのに、突然何を思ってか簡単にひらり…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
ご近所さんの話 参【大人夜と子昼の訪問】
静かな夜道にからん、ころん、と音が鳴る。歩を進める度にからん、ころん。小さな歩幅でゆっくりとからん、ころん。軽やかなそれは耳に心地よくリクオにとっては決して嫌いな音ではなかった。……いや、むしろ好き、という部類に入るだろう。 母の揺れる袂…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
ご近所さんの話 弐【大人夜と鴆(一部、鴆→夜)】
「……つまりだ、あんたはいつから衆道横切って稚児趣味になったんだ」「稚児とはまた粋も何も無いもんだ。もう少し違う言い回しが出来ないもんかねぇ」 稚児は稚児だろう。あんな子どものうちにさえ入らぬようなガキ相手に何やってるんだ! と怒鳴りたいも…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
ご近所さんの話 壱【大人夜と子昼】
怖い、怖いよ、と子どもの泣く声がする。赤い赤い夕焼け色に染まる世界で、奇異な目で嘲笑うばかり誰一人として助けてくれる者のいない世界で、子どもは必死にその短い足で走り、縺らせ、転び、されど起き上がっては這い逃げる。 子どもはいつも追われてい…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
猫又物語【かくれんぼ】
気持ちの良い風が吹き、生い茂った青い葉がさわさわと葉擦れの音を響かせる。季節は春から夏へ。花の盛りも疾うに過ぎたしだれ桜の上で、リクオは煙管を片手にのんびりと夜の帳が下りるのを眺めていた。夕暮れから夜へと変わっていく時間帯、妖怪たちの動き…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
猫又物語【プロローグ・出逢い】
どんなに時が流れても、どんな姿になろうとも、また君の元に戻ってくるよ。 そう小指を絡め合って紡いだ約束を、君はまだ覚えているだろうか…――。 それは雪のちらつく寒い日のことだった。雪見酒だ、と鴆のところまで足を伸ば…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
酒は飲んでも呑まれるな
――ねぇ誰、ここまで夜を酔わせたのは? 声には出ていなかったが、顔もにっこりと愛らしい笑みを浮かべていたが、周囲にいる者たちは皆、恐ろしい地響きのような低い昼若さまの言葉を耳にしたような気がした。 どうしてこうなったのかって? 答えは簡単…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
異母兄弟パロ 肆(少し大きくなった子夜と子昼)
「……お前が望まなければ、オレはこれ以上の危害を加えない」 そういう誓約だ、だから安心しろ。そう言って押し倒したままの姿勢で、夜は昼の茶色い髪をさらりと指梳く。思った以上に優しい手つきに、もしかしたらこれは何かの冗談なのかもしれないという一…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
異母兄弟パロ 参
ざく、と貫く重い感触に手を滑らせないよう気を付けながら、ぐっと力を込める。鉄っぽい生臭い血の臭いに纏われながら斬り裂いた体は、切り口から血液や妖気を勢いよく噴き出し、屍と化した。初めの頃とは違い、飛び散る血液で身体に目立つ汚れを残すことは…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ
異母兄弟パロ 弐
赤い夕焼けが空を染め、薄く白く浮かぶ月が輝かしかった太陽と入れ替わりを始める頃、縁側に軽い足取りで進む子どもの影が長く伸びる。この時間帯の子どもは少々元気が良すぎて、幾人かの屋敷の者たちは苦笑を零すのだが、子どもはお構いなしに今日も溌剌と…
最期まで、君と共に夜のリクオ×昼のリクオ