約束 壱

 どんなに時が流れても、どんな姿になろうとも、また君の元に戻ってくるよ。そう言って真っ赤な血に染まった小指を突き出しボクは笑った。

「だから、ね、よる……そんなに、泣かないで」

 約束するから。また君の元に戻ってくるから。絶対、絶対、君のところに帰ってくるから、だからね。最期くらい笑って魅せて。最期くらいは我が儘言わせて。体は自分よりずっとずっと立派だというのに、子どもみたいに泣きじゃくる片割れにそう言って聞かせれば、またもくしゃりと顔をゆがませて、けれどどこか作ったような笑みを浮かべて、必死に、必死に小指と小指を絡め合わせた。

 ――約束だ、ひる……絶対、絶対、探し出すから

 しかと結ばれた約束。それにゆっくりと目を瞬いて、それから最期、とてもとても満足な笑みを浮かべて昼は全ての感覚を失った。たったひとつ、誰にも解けない呪いをかけて。

 

『――…願わくば、永久にこの身が輪廻より弾かれんことを……』

 

 そうして世界にひとり、転生妖怪が生まれた。たったひとりの人間の想いによって生まれたその妖怪は、決して輪廻の輪に戻ることなく妖怪として転生し続ける運命を負った。再びかの者と巡り逢うために。絡めた小指を嘘にせぬために。永久に妖怪として生まれ堕ちることを望んだ。