Adam’s CHERRY-7 (R-18)

 以前メイラー・ハウゼンはレイフロの血を麻薬のようだと例えた。ならばと俺は嗤った。憐れなチェリーは麻薬で生きていたのだと。だが今にしてみればとんでもない話だと思う。なぜ闇の者達が高邁な人間を堕落させようとするのか。聖職者を誘惑してみせようと躍起になるのか。答えは簡単だ。魂は、身体は、精神は、清ければ清いほどに美味であるからだ。祭司も夢でないほどに、清く正しく神の使徒として身を捧げてきたクリス。男に身を犯されることを知らず、一途に祈りを捧げ続けたその身体は未だ陽の下で歩くことを赦されるほど清い。そのような者の血がどれほど美味であるか──! 麻薬など目ではない。その中毒性は言うなれば至高の堕落。真祖さえも堕とす魅惑の血。
 だがその血が自分だけでなく他の者までも惹き寄せるのなら──もう必要ない。綺麗に塗り潰して隅々まで神の息吹きを消してやる。穢してやる。俺のものだ。俺がこの黒い世界に堕としたのだ。己のささやかな正義を踏みにじって、この子の生きるべき白い世界までをも奪って、後悔しないことを誓わせてまで堕としたのだ。今更誰かに奪われて堪るものか。この子は、俺の、俺だけの…………。

 

「……ほら、クリス…口、あけろ」
「ン、ぁ、…、ン、ぅ……ッ」

 跨がらせ、後孔に己の屹立を埋めたまま、レイフロは上手く視線の定まらないクリスへと深く口付けた。唇で柔らかく食み、それが合図とばかりに口を開かせ、覗く舌へと絡みついて。最初は舌先同士で触れ合い、表面をなぞるだけだったものが、いつしかぴたりと唇は合わさり、唾液を啜り合うものへと変わっていき。半ばされるがまま、ぼんやりとしているクリスへとたっぷりと純度の高い精気を押し流せば途端、びくりとその身を震わせ、恐る恐る瞬いた。

「起きたか、クリス。ククッ、……天国はイイトコだったか…?」
「…ゃ、ァ、ア゛、…も……っ、ふ、ン…う」

 もういらない、とばかりに弱々しく押し退けようとする腕を逆手に取り。指同士を絡ませて抵抗を失わせては再びディープキスを繰り返す。

「ン、…ンぅっ…ふ、ァ…ぅ、ン゛ぅ゛」

 舌の根まで溶けてしまいそうなほど熱い粘膜を掻き回してドロドロに濃い精気を送る。送られ、受け取る度にクリスの意識は澄明となった。もう幾度と繰り返したやりとりか。快楽に酩酊し、正体を失っては精気を与えられ、無理やり現実へと戻される。早々に意識を飛ばすことも、気が狂うことさえ赦されない。初めは怯え、いやだと首を振っては逃げようとして。それが幼子のように泣いて喚くものへと変わり、そのうちなんでもするから赦してくれと乞うようになり。それでも変わらず精気を与えられ、一定の時間が来るまで堪え続けるしかないのだと気付くと今のように僅かな反抗を残しながらも大人しく受け入れるようになった。受け入れなければただただ自分が辛くなるだけだと学んだのだ。

「ぁ、…っア、ア、ア…ッ」

 与える量を調整し、口付けを解く。つぅ、と伸びる唾液を舐め取り、最後に触れるだけのキスをする。そうすれば徐々にクリアとなってきたのかクリスの声に芯が通り始め。ぽたぽたと口端から涎を垂らし、喉が上下し始めた。

「あぁ……腹が空いたのか? ……なら、どうすれば良いか、もう分かるな?」

 ここへ閉じ込められた日から今日まで、ほとんど血を与えられないまま過ごしてきたクリスの唯一の糧。それが意識は戻るのに、空腹を満たさないまでの量しか与えられず、渇いて渇いて仕方がないのだろう。噛むなと命じていなければ今頃喰い散らかされていたに違いない。明らかに飢血状態だった。一歩間違えれば正気が飛ぶ。そんなクリスの腹を撫で擦りもう一度、分かるだろう? と先を促す。躾は始めが肝心だ。たった数日前に教え込まれたそれを思い出したのか。あの時の恐怖を二度と味わいたくないとでも言うように奥までずっぷりと貫かれたままの後孔がきゅうと締まった。

「こわくない、クリス。……腹がくちくなって、頭が真っ白になるほど気持ち良くなるだけだ」

 さぁ、と。やさしく濡れた声で促せばクリスはおずおずとレイフロへ腕を回し、腰を動かし始める。拙い動きで、それでも必死に男のものを搾り取ろうとする。

「ン゛…ァ、アっ…ン、ンぅうっ……」

 熟れきった粘膜で締め付けて、擦り上げて。一緒に味合わされる快感を堪えて。懸命に精液をねだる姿はいつ見ても可愛いものだ。全く慣れず、おぼつかないまま……何度言おうと一度で聞き入れないところも含めて。

「……クリス。何度言えば分かる? 言わなければ見逃してもらえると思ったか? ……仕置きがそんなに好きだとは想定外だな」
「ッ、……ちが…っ、ンッ、ア…っ」
「違わないだろう? あぁほら、また避けた……お仕置きだ」

 聞き分けのない腰を掴み、二度、三度と擦り上げる。クリスの弱いところ、前立腺を。

「ひッ…ア、ア゛…ッ、そ、こ、…っ」

 ガチガチと歯が鳴る。敢えて避けていたそこをズリズリと容赦なく抉られるのだ。腰もガッチリと掴まれ逃がせぬまま、性器を互いの腹に挟まれて。前と後ろいっぺんに蹂躙していく。

「……さて、どうする? このまま俺がイくまで頑張るか?」

 お前が何回イこうと最後まで止めてやらないが。そう暗に、自分でやるのとどちらがマシかを問うレイフロにクリスは首を振りぎゅうぎゅうと縋りつく。ちゃんとやるから、ごめんなさいと、幼い口調で泣きつかれれば、さすがに鬼心も引っ込んでしまった。

「怒ってない……ほら、やるんだろう? 腰を上げて」

 舌で涙を拭い、腰を撫で、支えてやる。おずおずと言われた通りに、けれど歯を食いしばって悦楽に堪える様はなんとも眼福だ。

「……ァッ、ン゛ぅ、…ァ、は、っ……」

 ぬちゅ、と水音をさせて抜けきる寸前、カリ首までを引き出させて。ヒクヒクとひくつく孔の縁に引っ掛けたままクリスはハッ、ハッと犬のように短い呼吸を繰り返す。この先を想像して、こわくなったのか、怯えているのか。震える腰に、……放っておけばいつまで経っても決心が付かなそうなその様に、レイフロは殊更やさしげにその耳へと囁いた。

「…クリス、そのまま腰を落とせ」
「ヒッ、…ア゛、ァ、…ン゛、ァア……ッ」

 熱く濡れに濡れた粘膜を割って、膨らみを潰しながら奥へと呑み込まれる。その衝撃にクリスの背が反った。少し間を置いたせいで、元の形に戻ろうとしていたところを無理やり割り入った形となったのだ。狭いところを初めてのように拓かれて、イイところをごりごりと抉られて、なのにぎゅうぎゅうと食らい付いては獲物を逃がさないように締めつけて。レイフロさえも息が詰まる。それに口端だけ上げて嗤うと、ガクガクと揺れる腰を掴み直し、僅かに浮いた体を引き落としてゼロ距離とした。

「ゃっ…ア゛ッ…ゃ、ア、ア…ッッ」
「…はっ、…奥も……ピッタリくっつけると、お前も気持ちいいだろう?」

 粘膜を掻き分けた先の、行き止まり。亀頭の先に触れる柔らかくも熟れきっていないそこへ。じんわりと小刻みにただ当てるだけでクリスの腹のナカは存分に戦慄き、吸い付いてくる。あくまで押しつけているだけというのに。それなのに徐々に快楽を得、思考を溶かした顔をし始める一方で本能的に何を感じ取っているのかいやいやと怯えるのだから堪らない。まだ熟れてないのだから無理をするわけがないというのに。……けれどもそれももうすぐだということも知っている。初めの頃に比べれば随分と柔らかく、そして敏感に蕩け始めているのだから。

「…クリス、もう終わりか?」
「ゃ…ち、が…ア゛、ア…ッ…」
「早くしないと……いつまで経っても腹が膨れないぞ?」

 意地の悪いことを口にするレイフロに見切りをつけられる前にとクリスは震える腰を持ち上げる。端から見れば全然持ち上がっていないが、しこりのところで引っ掛かっているのはよく分かる。張り出たカリにそこを押し潰されながら何度も通られるのは相当つらいのだろう。ゆるりと目を細めて様子見をする。意を決したように腰を落として、──腰を掴み最後まで落としきらせて、その度にとろりとナカも頭も蕩け落ちたような顔をする。そしてまた腰を上げさせ、奥まで落とさせて。

「ア…ッ…ハ、ァ、…っ、や゛…ッ…」

 ストロークが短い分、多少とは言え動きが少しずつ滑らかに、速くなっていく。トンッ、トンッ、と奥と前立腺を叩きながらナカをズリズリと擦り上げられ。無意識に逃がそうとする腰さえもさも手伝ってやるとでも言うように掴んで固定してやる。どこにも逃げられず、快楽も逃せず、一定のリズムで強制的に叩き続けられ。トロトロになりながらも、ひたりと吸いついてはぐちゅぐちゅと擦られに擦られ、そこはあっという間に限界を迎えた。

「ゃ…ッ、ア゛、ら、めれ゛っ…、……ッ~~~~ッ」

 ナカがきゅうっと収縮し、少量の精液が押し出されるようにどろりと互いの腹へと滴り落ちる。力を失ったように深くしゃがみ込むと、クリスは当てのない快感からかレイフロへとしがみつき、ビクビクと身体を跳ねさせた。ナカでイくのは射精と違って終わりがない。終わりがないから何度でも気をやれるが──ちらりとクリスを覗き見れば涎を垂らしながらハーッ…、ハーッ…、と明らかに快楽とは違う息遣いをしており。反してとろりと熱に蕩けた瞳に苦笑が溢れた。大食漢は伊達じゃない。あれだけ喰わせた精気ももう尽きたのか。可愛くてかわいくてしがみつく肩へと口付ける。そしてそのまま強めに吸ってやれば幾多にも及ぶ跡の一つとして赤い花が咲いた。執着と所有の印として。

「あぁ……そのままだと辛いな? クリス」

 そろりと半勃ちのままの性器へと手を伸ばし、下から上へと搾り取るように擦ってやれば出しきれなかった精液がとろとろと溢れて。くぱくぱと開閉する鈴口を指の腹でくちくちと慰めながらも、もう片方の手で尻を掴むとレイフロは自らの腰を押し付けた。

「ひ、ッ…い、ま…、イッ、…ンン゛ッ、…まっ、ァ…ッ…」

 イッてるからと、まってくださいと呂律も回らぬ口で懇願するのを横目に、レイフロは自らのタイミングで腰を引いては突き上げる。クリスにしてみれば堪ったものではない。だが、離さないとばかりに締め付けてくる粘膜も、息継ぐ合間にねっとりと絡み付いてくる襞も、カリに引っ掛かる膨らみも、突けば突く程どんどん柔らかくなる奥も男を誘う一級品だ。ここまで動き出したら止められない。

「ハ……ッ、…ん、気持ちいいなァ?」
「ァ゛…ッ、イッ、ぇ、…ッン、ンン゛~~~ッ」
「……ッ、クク…ずっとイッてるのか。まぁこっちも、搾り、取られそうだが…ッ」

 今にも逃げ出しそうな腰をしっかりと抱え込み、じゅぷじゅぷと音を立てながらラストスパートをかける。イキ続ける前立腺を容赦なくたっぷりと擦って。奥もグリグリと押し付ければ、ナカはひくひくと痙攣しながらもぴたりと吸い付いてきて。ハッと息を吐く。油断も隙もない。これではどちらが喰われてるのか分かったもんじゃないと思っているうちに、あっという間に持っていかれる。

「…ッ、ン……ッ、ッ」
「ひッ…ンン゛…ッ、~~~~ッ」

 奥の奥、行き止まりのところで。腰を押し付け、熱い精を解き放つ。数瞬遅れて、クリスが背を反らせた。二人の腹に挟まれた前からはぽたぽたと壊れた蛇口のように薄くなった精液が滴って。ナカを二度、三度と粘膜に擦り付けるようしごいてやれば、一滴残らず全てを寄越せとばかりにすぐにじっとりと絡み付いてくる。

「…っ、ふ…ン、ン゛…ッぅ…」

 自分でもコントロールが利かない上、じわじわと粘膜から精気を取り込んでいるのだろう。堪えるように手足をきゅうっと丸め、しがみつきながら濃厚で生々しい熱と悦楽を息詰めて凌ごうとする姿は何度見ても飽きない。震える腰を、背中をフェザータッチで撫でながらクツクツと嗤った。

「……腹はいっぱいになったか?」
「ン、ン、ぁ……ハッ、ァ…もっ、と…」

 そう口にすると、クリスはちゅうとレイフロの首筋に口付けて。かと思えば舌先でゆっくりと舐め回し、柔らかく吸う。そうして痕が残れば別の場所をまた舐めて、また吸って。噛めもしないのにさも血を啜ろうとしているのか、中途半端に理性だけが飛んでいるのか、……どちらにしろ、一丁前にねだり方だけは覚えたようだった。男を煽るには十二分なほどのやり方で──。

「まったくお前は……」

 少し落ち着いたはずの嗜虐性が腹の底からぞわりと這い上がる。……今日は寝かせてやれないかもしれない。そんなことを思いつつ、食むことに夢中になっているクリスの顎を指で持ち上げ、そのまま顔を上げさせて。唇だけで嗤うとその身体をベッドへと押し倒し、深く口付けた。お望み通りたっぷりの精気を与えて。そして軽く腰を動かすと、すっかり硬さを取り戻したそれが奥をくにゅりと押し潰す。

「ッンぅ…ッ! ン、ン゛…ぅ゛う…ッ」

 途端、びくんとクリスの身体が跳ね、とろんと蕩けていた目が怯えたように見開かれる。ソコは随分柔らかくなったとは言えクリスの一番嫌がるところだ。いやだとでも言うように、逃げるように拒むように、肩を押しやるその手を絡め取り、シーツへ縫い留めて逃げ場を無くす。唇を離して唾液を舐め取れば、レイフロはゆったりと突いては離し、また突いて……を繰り返し始めた。

「ゃ、ひ…ァッ、…ァ゛ッ」

 行き止まりの場所。まだ男を受け付けないところ。そこをゆっくりと時間を掛けてじっくりと嬲る。まるで粘膜同士キスするかのように。亀頭をぴたりとくっつけてはタイミングを見計らい、離して、焦らして。ひくひくと物欲しげにひくつき始めれば、また押し潰すように触れて。くにゅ、と押し潰す度にクリスの身体がびくんと跳ねた。けれどもそれ以上動かず、ただただ熱を押し付けられ、その硬さに焦らされるだけで──。いやいやと抵抗していたものが徐々に、腹のひくつきを抑えられなくなっていき、次第に自ら腰をくねらせてなんとか強い刺激を得ようと淫らな動きへと変わっていく。それをやんわりと押しとどめ、動けないようにして更に焦らして、焦らして、焦らして──。くっつけて離しているだけだと言うのに今にも気が狂わんとばかりに泣いて腰を揺すろうとするのだから嗤いが込み上げる。クリスも分かっているのだろう。もうココが自分の性感帯になり始めているということを。

「…ッ、ァ゛…ぅう゛…ッ、ぅ~~~ッ」

 ハッ、ハッと息継ぐ合間に獣のように唸っては泣きを入れる。動きたい。動かせない。でも動かしたい。グリグリ当てたい。手に取るように分かる欲求にうっとりと目を細め、唇を舐める。こんなもの、まだまだ序の口だと言うのに。

「……ほら、分かるか? 奥のココ、とろってしてきたぞ」

 クスクスと嗤いながら蕩け始めたそこを、くにゅっと押し潰す。そのままトンと軽くノックしてやればそれだけでクリスは背を仰け反らせ、ビクビクと体を震わせた。

「……じゃあ次は……しばらくくっつけて慣らしてこうな?」

 そう優しい優しい声をして。ようやく、と僅かに湧いた希望を踏みにじるかのように囁かれた言葉にクリスがひくりと喉を引き攣らせた。ゃ、や…、と怯え、首を振るのを無視し、腰を抱え直すとぬちゅっと音を立て先程より強めに亀頭を押しつける。

「ひ…ッ、…ァ゛、ッ……ッ、ァ」

 当てられてるだけ。押し潰されてるだけ。硬い亀頭を押しつけられているだけ。──それなのに少しずつクリスの息が浅くなっていく。声が止まらなくなる。先程とは異なり、ずっと弱いところが押し潰され続けるせいか、離されない分、刺激が減って疼きが止まらないせいか。いつまで経ってもトドメを刺されない生殺しに近い感覚に腰を振って動かしたい衝動が更に強まったのだろう。とにもかくにもその乱れようはレイフロを愉しませるだけだった。腰を揺り動かそうしてみたり、それが駄目なら自棄になって暴れようとしてみたり。もちろんレイフロに腰をガッチリ掴まれているのだから何か出来るわけもない。全てが無駄だ。そうクリスも分かっているだろうに、それでもやらずにはいられないのはココがそういう場所だからだ。焦らされれば焦らされるほど、我慢させられればさせられるほど、正気であることを後悔する。それほどに疼きは堪えがたく、じわじわと溜まっていく快感は重くて、つらい。あれほど気丈なクリスが啜り泣いて先を乞うくらいには。

「も、…ッ、やァ゛っ…ハッ…ァ、ゃく…っ…は、ゃく…ぅ゛…ッ」

 もはや恥も外聞もなく取り縋る。早く動いてくれと。ぐちゃぐちゃにしてくれと。それをキスで宥めて、優しい優しい声音で耳元に囁く。

「ダメだ。前にも言っただろう?」

 お前が泣こうと喚こうとこうして慣らして、慣らして、慣らして……ココがとろっとろになるまで弄くって。お前の方からこの奥を開いて、俺のをずっぷり根元まで飲み込めるようになるまで、って──。クン、と下腹の一点を押し撫でる。ほら、ココ、と言って。

「集中してみろ。…ずーっと当てられてるの、気持ち良いだろ?」
「ハッ…、ァ゛ッ、…ァッ、…ん゛ッ…ッ」
「くっついてるトコ、熱くてジンジンするよな? 動いてほしいよなァ? ゴシゴシ擦ったら、きっとトぶほど気持ちが良いだろうなァ? ナカ、ひくひくしてるもんなァ?」
「ァ、アッ…ッ、ンぅ゛……ッ…、ァッ、ン、ぅう゛~~…ッ」

 想像してイッてるのか、ナカでイッてるのか。言葉に合わせてクリスの背が反る。もちろん強い刺激でないのだからイキきれるわけがない。もどかしさとフラストレーションが、腰を振りたくりたい衝動が溜まるだけだ。ぐしゃぐしゃとシーツを掻き乱しているのがその証拠である。

「でも、我慢だ。……そう、上手だな。ちゃんととろとろになってきてる。分かるだろ? ココの行き止まり、緩んできたの、」

 そう言って腹を撫で、ほんの少しだけ腰を押し進める。そうすればくにゅ、とも、ぬちゅ、とも言えぬ柔らかなぬかるみに包まれると共に、クリスが声無き声で絶叫した。

「ッ…ァ゛ッ、ッ、…ッ~~~~~ッ、ッッ」

 ビクンと身体が大きく仰け反り、ぶるぶると手足が震える。カチ、と歯が鳴った。手当たり次第にシーツを引っ掻き回し、絡めていた足が、押し付けようとしていた腰が途端、逃げるように引こうとする。それをやんわりと掴み、引き戻せばまたぬかるみが小さく口を開いた。

「どうした、痛かったか? ん?」
「ち、ァ、ア゛ッ、ッ…ンぅ゛…ッ、~~~ッ、も…ッ、…こわ…ぃ…ッそ、こ、…ゃァ゛…ッ」

 ……ようやくこれから自分が何をされるのか分かったのか。それともココを圧し拡げられる快感に本能的な恐怖が沸いたのか。クリスのイヤイヤが酷くなる。もうキスくらいじゃ誤魔化されてくれないほどのそれに思わず苦笑が溢れた。少々……いや、かなり焦らしすぎたのかもしれない。まるで子ども返りでもしたかのようにぐずるクリスへ分かった、分かったと宥めながら抱き締めてやると、レイフロはゆっくりと腰を動かした。──亀頭をそこに押し付けたままゆっくりと揺するように。

「ァッ、ア゛ッ、ン゛…? …、…ッ……? ッ、ン、ンぅぅ~~~…ァ、ッ」

 押し付ける力は同じまま、軽く揺すっただけ、揺り動かしただけなのに。声の質が、反応が、あからさまに変わる。堪えて堪えて押し潰していた喘ぎ声から、鼻にかかった甘ったるい啼き声へ。いやいや抗っていたのが、おろおろと落ち着きのないものへ。どうして息を吐く度にこんな鼻に抜ける甘えたでねだるような声が溢れるのか、揺すられる度、気持ち良すぎて腰がガクガク震えるのか、全く理解していない顔をする。自分がどれほど念入りに下拵えをされたのかも。レイフロの意思一つで存分に気をやれるのかも。なにもかも知らない顔をして。

「どうした? 動いてほしかったんだろう? これは気に入らなかったか? ……じゃあ、こっちにしような」

 揺するのをやめ、腰を突き動かして一定の間隔でノックする。トン、トン、とごく軽いものを。遅すぎず、速すぎずのスピードで。初めは疑問符を浮かべ困惑していた顔も、徐々にとろりと恍惚の様に溶け、盛った猫のように喘ぎ始める。

「…ハッ、ンぅ~~~ッ、うぅ…ハ、ァ…ン~~~ッ」

 激しすぎない動作に、強すぎない快楽。そのおかげか、ようやく欲しいものが与えられたとでも言うように、吐息だけの掠れた甘ったるい声が止まらない。軽いひきつけを起こしたように四肢を強張らせては何度でもイき、うっとりと酔いしれる。つい先程までこわいこわいとぐずっていたのがまるで嘘のように。もしかしたらきつすぎない刺激で忘れているのかもしれない。とろんと熱に浮かされたクリスの顔にキスを落としながら、レイフロはクスクスと嗤うと腰を動かし続けた。トン、トン、と一定の間隔で。とろとろのそこを叩き続けて。さて、この小さく口を開けたぬかるみは……大切な奥を守る弁はあとどれほど堪えられるのか。ここを犯され続けていることにクリスはいつ気付くのか。トン、トン、とノックし続ける。気持ち良さそうによがる声はとても可愛い。甘えてねだる声も、濡れた吐息も。
 ──だがその声が、溜息混じりの喘ぎ声が、か細い悲鳴へと変わったのは何度甘く達した頃か。

「ァ…? ン、ぁ…? …ッ、…と、ま…ァッ、ッ…ッ、っ、ァ…ンぅ~~~~」

 止まらない。止まってもらえない。イッてるのに弱いそこを休みなくノックされ続ける。終わりがない。終われない。気持ち良いまま下りてこられない。それがどういうことか何度か達してようやく気付いたのだろう。ぶるりと身体を震わせ、もういい、いらない、とレイフロを押しやろうとするも、もはや腕にも足にも力は入っておらず。ただされるがままに、与えられるままに快楽を受け入れるしかない。

「ッ…ゃッ、もッ…とま、…ぇッ、…うぅ~~~~ッ、…ッ、……とけ…ぅう゛…ッ」
「腰が溶けるくらい気持ち良いなぁ、クリス? ほら、トントンされるの、好きだろう? 気持ち良い、気持ち良い」
「ンぅ゛~~~…やァ゛ッ、…こぇ…ッ、ぉわ、ァ…な、ンッ、…ッン゛…ッ~~~~」

 クリスの泣き言にレイフロは唇だけで嗤う。溶ける? 終わらない? 当たり前だ。これは最初からクリスの状況を一切顧みない動きなのだから。ココが開くまでやめる気などないのだから。つまりどんなに襞をひくつかせても、どんなに奥がきつい痙攣をしていてもリズムを変えることはない。ナカをきゅうと強く締め付けイッている最中であろうと、脱力して奥に進もうとするそれを拒めないときであろうと、同じこと。トン、トン、と……ぬちゅ、くにゅ、と一定の間隔で奥を突き続ける。そしてそれに堪えきれず諦めたかのようにそこが開くのも──。

「あぁ、…クク……っ、ようやく開いた、か…っ」

 とろとろのそこを割り入ってズン、と奥を突き抜ける衝撃。想像以上にきつく締め付けられる感覚。溶け落ちそうなほど熱く濡れた粘膜に。思わず眉を寄せ、ハッと息を吐く。はくり、とクリスの呼吸が空回った。見れば、見開いた瞳からぽろりと涙が零れさせ、ガタガタと震え出し、大きく身体を仰け反らせる。

「……ッ、ッ、ァ……ヒッ、…ァ、…、ン゛ッ、…ン~~~~…ッ、ッ…!」

 挿入られてはいけないところ。犯されてはならない大切な場所。そこを暴かれたのだ。それも経験したことのない強烈な快感と共に。

「~~~~~、ァッ、ッ…イッ…~~~」

 トリガーは引かれた。あとは意識が途切れるか、脳が焼き切れるまでイキ続けるだけ。だらだらと口端から伝い落ちる涎を指で拭い取ってやりながら、レイフロはゆっくりと腰を引いた。砂時計のオフィリスを犯すように、奥から狭いくびれを無理やり拡げて亀頭を抜き出し、更に前立腺を擦って入り口の縁に引っ掛かるところまで腰を引く。たったそれだけ。それだけでも目眩がしそうなほどの快感を──どうにか逃そうと、堪えようと、シーツへと追い縋るクリスを前に、レイフロはうっそりと嗤い、目を細めた。ようやく手に入った、と。もう清廉な神の使徒も純潔の処女もここには居ないのだと。あとは奥の奥まで己の精で穢すのみだと。ゆるりと唇が吊り上がる。

「…さぁ、クリス。食事をしよう。ココだ。……ココの奥でちゃんと搾り取れよ?」

 臍のほんの下、一点をクン、と押し撫でて。腰を引いた時と同じ場所を抉りながら、奥の奥までズン、と深く穿った。

「ァ゛、ッ、……ッ、う゛ぅッ、イぅッ、ンン゛~~~~ッ」

 背筋が反る。爪先がシーツを掻く。舌を仕舞えないまま、ぶるぶると身体を痙攣させ、ひくりと喉を震わせる。ゆっくりと長くナカを犯していくロングストローク。ヒクヒクとひくついて収縮しようとするナカを亀頭が割り拓き、前立腺をグリグリと抉って。その後も竿でズリズリと擦り上げながら同時に奥のくびれまでをも押し拓いてずっぷりとハメる。ビギナーなら一度だってキツイやつだ。射精はもちろん、前立腺でイくのさえ違う快感なのだから。重くて深くて、クる前にイッてしまうところ。堪えることさえ赦されない可哀想な場所。そこを一度ならず何度も何度も擦り上げられるのだ。

「ッ、ぃ…ッ、ァ、イ゛ぅ、ッ…イッ…~~~~ッ、ッ」

 何度だってイける。動きを止めない限り。もはやここまで来たら特別なことをする必要もなかった。ただ一定の速さでナカを奥まで擦り上げて愛してやればいい。それだけでクリスはイキ狂う。

「……ハハッ、……イイ子だな、クリス。上手に出来てる」

 そう口にすればナカはイく寸前の、レイフロのそれを押し出そうとするくらい強く収縮し。一際きつく締まったかと思えば一気に弛緩して、柔らかな粘膜が吸いついてきて。レイフロの唇から熱い溜息が漏れる。嗤い声も。もしかしたら奥だけでなく手前の刺激と同時にイッてるのかもしれない。それくらい締め付けはきつく、ナカはとろとろに蕩けていた。絶え間なく襲って来る快感に知らずレイフロの息も乱れる。喰ってるようでいてその実、喰われてる気分でもある。男の精をねだるには十分すぎるほどに上出来だ。こめかみにキスを落として、耳元でもう一度イイ子だと褒めてやれば、それだけでまたもやクリスの身体が跳ね上がった。クリス自身、もう何でイッてるのか分からないのだろう。このまま耳でも舐り続ければ立派な性感帯が出来上がるに違いない。残念ながらその余裕は今、一ミリたりとも無いのだが。

「…ッ、ハ、…イきそ…、……」

 お前もそのままイッちまえ、と囁いて。奥の奥に突き立てた瞬間、狙ったようにきゅう、と締め付けられ、思いのまま欲望を叩きつける。

「イッ、ッ~~~~…、ァ……ア゛、ら、め…ッ……ァ、ひ…ン、ッ~~~~ッ」

 初めて奥で浴びる熱にクリスがガクガクと痙攣し、喉を震わせて。最後まで搾り出すよう二、三度くびれでしごいて一滴残らず注ぎ込めば、クリスは何かを拒むようダメダメと繰り返し、かと思えば萎えかけたそれからぷしゃっと透明な液体を吹き出した。

「…ひ、…ァ、ち、が…ッ、ちァ…うぅ~~~…ッ…」

 ぷしゃ、ぷしゃっと。自分の意思で止められず腹の上をびしょびしょにしながらクリスが違う違うとぐずり泣く。人間の頃の感覚を思い出し漏らしたとでも勘違いしているのか。羞恥と動揺で感情が決壊したのか。どう見ても潮を噴いただけなのに、この様子だとクリスにはその知識さえ無いのかもしれない。まぁ清廉潔白に生きてきた身としてはそこから尿や精液以外のものが出てくるなんて思いもしないのだろう。おそらく気持ち良すぎて歯止めが効かなくなっただけだ。泣くことなんて何一つないのに、今の今まで知らなかったのかと思うと、また一つクリスの初めてを暴いたのかと思うと、腹の底から嗤いが込み上げた。あぁ、可愛い、可愛い、俺のクリス。お前はどこまで淫らに堕ちてくれるんだ。クスクスと嗤いながら、キスを落とす。次は尿道ソコを拓くのも良いのかもしれない。でもまずは、と甘ったるいくらい優しげに、泣きぐずるクリスを宥めてはあやす。問題ないのだと、そういうものなのだと教え込むために。これから先、癖になるよう仕込むために。……夜はまだまだ長いのだから。