ご主人様夜とメイド昼

 ぴちゃぴちゃと音がする。淫らな音だ。こんなところでするような音ではない。……こんな書斎の机上でするような音では。噛んでいろ、と言い渡された黒いメイド服は更に深い色に染まっているに違いない。机の上に乗せられ、後ろに手を付き、広げた足と咥えて持ち上げた服の裾の間でご主人様がぴちゃりと音を立てる。ご主人様の目の色によく似た赤い舌が自身の先をべろりと舐め上げた。

「…んんっ…ふ、ぅ……!」

 漏れるのはくぐもるも甘えるような高い声。びくりと爪先が震えるも閉じることは許されない。ご主人様には逆らわぬよう、そう躾けられている。開けと言われれば羞恥に染まろうと開かねばならぬのだ。生ぬるい柔らかな感触がゆっくりとなぞった。先の方ばかりをねっとりと絡みつかせ丹念に嬲り、どうしようもない境地へと導こうとし。そして孔をつつけばひくりと腰が揺らめき、堪え切れないとなると、しかしそれ以上は責めることなくつつ、と下へ下りていき、未だ着けられたままの下着の上を撫でる。狭い面積のそれは女性用のもの。既に勃ち上がった今、ほとんど用を為してはいないというのに、変に根元を圧迫して苦しさだけが増えていく。その布の上から唇を使って愛撫して、ちゅう、ときつめに吸いついたりして。

「…っん! …んんんっ」

 噛まないでぇ…っ、とそう言えたらどんなに良かったか。くっ、と仰け反らせた顎の先につぅ、と唾液が伝う。

「大分、悦い顔をするようになってきたなぁ、昼?」

 来たばかりの頃はそりゃあもう、相手構わず噛みつく野良犬のような目をしてたくせに。仕置きがそんなに怖かったかい? とくつくつ嗤うその姿に、知らず体は逃げようと後ずさる。思い出したくもない。あんな悪夢のような日々は。逃げんじゃねぇよ、とご主人様が膝を掬う。それだけで動けなくなった。逆らえば怖ろしい目に遭うことは身を以て知っている。

「そう怯えるな」

 イイ子にしてりゃあ気持ち悦くしてやる。そう言って、ご主人様は下着の紐を口で咥えるとするりと解いてしまった。