後天性 夜昼女体化

 そう、例えば胸とか下半身とか? 性別が変わったら気になるものは気になるだろうね、それなりに。でもそれは最初だけの話であって、慣れてくれば徐々に弊害が生じてくる。すなわち、

「………重い、」
「それ、なんかの嫌味か何かかなぁ、夜?」
「嫌味じゃなくて事実だ……女ってやつはなんであんなに背筋伸ばして生きてられるんだ、昼」
「知らないよっ、……っていうか、その法則に乗っ取れば、僕としてもどうして君も背筋伸ばして生きてこられたのか甚だ疑問なんだけど……!」

 重い重いと互いに言い合って、そうやって疲れて、結局机に突っ伏してはぁ、と溜息を吐く。いや女性は小さい、いや女性は筋肉が少ない、いや骨格が違うなど言うし、一見して女性となれば軽くなると思いきや、(実際そうなのかもしれないが)体感的には全く違うのだ、むしろ重くなったとしか言いようがない。どうしてかって? そんなの簡単だ、夜は胸が、昼は髪が、それぞれ膨らみ、伸びたからだ。ちなみに昼の胸はつるぺたで、ほとんど膨らみが感じられないのは元の筋肉量に値するからだと信じたい。代わりに栗色の髪が腰まで伸びて、それはそれで重たいのだが。

「まぁ、オレはこれ以上伸び要素がないからな……急に育つからいけねぇのか?」
「うぅぅ、絶対肩凝るよ、コレ……」
「同感だな。つーか、毛倡妓を本気で尊敬するぜ、これは」
「……~~~っ、もうっ、胸に関する発言は禁止!! 同じ自分なのに、同じ自分なのに……この差ってあんまりだよ神様……」
「言っとくが、こんなの無い方がマシだと思うぞ……大体お前、これ以上自分重くしてどうするんだ」

 と、そこまで言って夜はふむ、と考え込む。急に黙った夜に昼は訝しげに眉を寄せるのも束の間、がしっと腕を掴まれるとそのまま胸に抱きこまれた。え、ちょっ、まっ、……そうやって、昼が混乱に目を回すのも無理はない――あくまでも今、夜の体は女性のものであって、その胸は同じ女性となった現在、羨ましいくらい豊満で柔らかくて……。にやり、と夜が嗤うのも知らぬまま、そうして畳に押し倒されて、目の前にはふくよかな胸。女性の身とは言え、元は少年、意識は男、顔を真っ赤にさせたってきっと誰にも咎められやしないだろう。それを分かっているのか、にやにやと性悪に嗤う美女はその恵まれた体を押しつけて言うのだ。

「とは言っても、どうせ分かんねぇだろ?だったらその身で教えてやろうかねぇ」

 そりゃあ、もう色々と。そう囁いた夜にナニを教えられたのかは……昼のみぞ知る。