【SS小説】カラーバースネタ(R-18)

ねぇねぇこれカラーバースでノクプロちゃんやったらクローンベイビー(全員アルクェス)生まれのプロンちゃんノクトさんで青色を知ってそれまで灰色だった世界(空や海)がこんなにも美しい色をしてるなんて知らなかった…って泣き出しちゃうよ????やばくない????やばいよね?????
その後アデおじと出会って「あーぁ、気に入らないなぁ…」って顔がっちり掴まれて「青、ねぇ?」みたいに意味深な感じでノクトさんチラ見して「本ッ当、気に入らないな…」って吐き捨ててほしい。きっとよく分からず混乱してるプロンちゃんはアデおじの目の色が初めて見る色だって気付いてない。
プロンちゃん実は二重色盲だった感じで。上書きできない青色の目がアデおじ、どうも気に食わないようです。
晴れた日の真っ青な空と海の狭間でノクプロちゃんがお互いに瞼へくちづけを贈り合うのとても尊いしその儀式が終わって目を見開くとそこには見たこともない青が広がってて思わず泣いてしまうプロンちゃんと泣くなバカこれからたくさん見れるだろって眉下げてわらいながら指で乱暴にぬぐうノクトさんな…。
──色が見えない世界ってどんな感じなの?それはいつだって答えに困る質問だった。でも今なら思う。あぁ、確かに自分は可哀想な人間だったようだ、と。──世界が、空がこんなにも美しいということを、今の今まで知らなかったなんて。
それは感動
それは喜び
それは奇跡

それは、色を知らないアルクェスだけが知る世界。

 

 

 

「──そういえば、あの人の目、」

ふと、プロンプトは思い出したように進めていた足を止め、小さく呟いた。

「……プロンプト?」
「え? あぁ、ごめん」

急に止まったせいか、不思議そうに首を傾げるイグニスにそう返すと、プロンプトは再び足を動かしながらも先のことについて考えていた。
赤髪の奇妙な中年の男、アーデン。
ノクトの頭痛の原因が、カーテスの大皿で眠っている巨神のせいだと教えてくれた男のことだ。

そもそも何故そのようなことを思い出すことになったかと言えば男が、巨神はノクトに何か伝えたいことがあるのだと言ったのが始まりで。
ガーディナでも一度会った男──後にグラディオやイグニスが信用に足る人物ではないと評した男──がいっしょにカーテスの大皿に行こうと誘ったからだ。
うさんくさい話ではあったけど、「ヤバけりゃ戻る」を合言葉に話に乗ったプロンプト達は、ノクトの運転で男と共にカーテスへと向かうはずだった。
……はずだったのだが。

『今日はここで休むか』

アーデンの提案で何故かカーテスではなくコルニクス給油カーテス支店のモービル・キャビンで一泊することとなり。
しかも自分達と一緒に泊まるのだと言う男に、何を考えているのかは誰にも分からなかった。
プロンプトの印象としては、ただただうさんくさい変な男。
……それでも口が上手いのか、さも始めから五人旅だったように先程までそこそこ楽しく談笑してしていたのだ。
その空気が変わったのは、

『気に入らないなぁ…』

そこそこに弾んだ会話の中で、男がいきなりプロンプトの顎を持ち上げたかと思うと、そう言って眉を顰めたからだ。
突然のことに驚くプロンプトをよそに、男はその目を覗き込むと、『青、ねぇ…?』と意味ありげにノクトの方をちらりと見た。
青。
ノクトからもらった色。
キングスブルー。
プロンプトの誇り。

『彼にもらったの?』

そう問いかけられる言葉にプロンプトはおずおずと頷く。
そうすれば男の目が細められ、『じゃあ、もう灰色には戻れないね』と口端を歪めた。
気付けばぎりぎりと顎に食い込む指が痛くて、怒られてるのか責められてるのかも分からず怯えるように混乱するプロンプトを助けてくれたのは、グラディオだった。

『……オッサン、明日は早いんだろ? 準備もあるし、もう休むぞ』

一拍置いてそうだね、と答えた男はあっさりとプロンプトから手を離し、あとオッサンじゃなくてアーデンね、と軽口を叩くと、その場をお開きにしてしまった。
結局うやむやとなった男の行動。
一体何がしたかったのか。
何か気に触ることをしただろうか。
そんなことを考えながら、仲間と共にモービル・キャビンのステップを踏み、ふと思い出したのが男の目であり、こぼれ落ちた冒頭の言葉だった。

「あの目……」

不躾に覗き込まれた目。
睨み付けるような強い眼差し。
あの時は混乱していて気付かなかったが、目を覗かれていたということはプロンプトもまた、男の目を覗いていたということで。
その男の目を今、冷静な状態で思い返してみれば初めて見る色だと気付き、プロンプトの気持ちはふわりと舞い上がった。

「…あの人、ちょっとこわかったけど、綺麗な目の色してたよなぁ」

ブラウンのような、グリーンのような。
光の加減で変わる、言葉に出来ない不思議な色だった。
あんな目の色を持つ人がいるなんて。
特定の色を認識できないアルクェスにとって初めて見る色というのはいつだって心踊るものである。

「…やっぱり珍しい色なのかな? うん、だよね。オレ、初めて見たし」

弾かれたように三人が顔を上げた。
しかしプロンプトはあの不思議な色合いを思い出すのに夢中で、それには気付かない。

「あの色、何て言うんだろ…」
「──…ヘーゼルだ」

まさか独り言に返事が来るとも思わず、プロンプトはイグニスの言葉に目を丸くした。
相変わらず物知りというか、よく周囲を見ているというか。
まぁ、うさんくさい男の目の色までじっくり見てるとは思いもしなかったが。

「そっか、ヘーゼルかぁ~、どこで見れる色かなぁ」

また見たいな。
見せてって言ったらあの人怒るかな?
なんか嫌われてるみたいだし、やっぱりダメかも。
つい先程、あんな目に遇ったというのに、それをすっかり忘れたように饒舌に語るプロンプトに三人は次第に顔を強張らせていく。

「ていうか、オレなんであの人に、あんなに睨まれたんだっ、け…」
「──プロンプト」

かたいノクトの声がプロンプトの言葉を遮った。
と、同時にぎしりとしなる音がするくらい左腕を強く掴まれ、プロンプトは息を詰める。

「ぃっ、…た、…ノク、ト?」

なに? 痛いよ、放して──。
そう文句を言おうとして、そこでようやくこの場の異様な雰囲気に気が付いた。

「ぇ、………?」

こくり、と唾を飲む。
プロンプトの舌が凍ったかのように動かなくなった。
なんで。どうして、そんなに怒ってるの。

剣呑、という言葉さえ生易しいほど、無表情でありながら、その青い目だけはぎらぎらと恐ろしいほどの怒気を放つノクトに、訳も分からず身をすくめる。

「ノクト、」

イグニスの諌めるような声。
しかしそれに反応することもなく、ノクトは掴む指に力を込めるだけで言葉はない。
理解も出来ず、ただ痛みに顔をしかめるプロンプトに、グラディオは深い溜息を吐くと、苦々しげに言った。

「………モーテルに移動するぞ」

「ノクトッ、プロンプトは知らないんだ!」
「ハッ…! 知らないから許されるって!?」

モーテルの別室にプロンプトを引きずり込もうとするのを必死に止めようとするイグニスの手を振り払い、ノクティスはその言葉に噛みついた。
もはや知ってる知らない、分かる分からないでは済まされない話だった。
アルクェスであるプロンプトが初めて感じる色──それが色を与えた自分ではない、他の誰かの目の色だったという事実なんて。
それがどういうことなのか、分からないイグニスではないだろうに、それでもまだ落ち着けと言う声が腹立たしくて苛立たしくて仕方がない。

「ノクト…!」

今だけは煩く感じるイグニスの声を隙をついて扉ごとシャットアウトする。手際よく鍵を閉め、薄暗いライトを付ければドンドンと扉を叩かれ、名前を叫ばれる騒々しさはあるものの二人だけの密室空間が出来上がり、少しだけ感じていた苛立ちは薄れる。
それでも恐怖は拭えない。
そう、恐怖だ──己の中で形なく広がっていたものにノクティスは気付く。
宵闇に蔓延るシガイと遭遇した時でも感じなかった絶対的な恐怖。おそろしさ。
ファルテスとして──唯一、アルクェスに色を与えることの出来る人間にとって──己の色を与えた運命の相手が他者に奪われるのではないかという本能的な恐怖。
それは焦りとなり、怒りとなり、奪われてたまるものかと、逃しはしないと、対象者へ向くのだとようやく知る。
だが、それは経験しなければ誰にも理解できない感情だった。
イグニスがその感情について知ってはいても理解が出来ず己を止めたように。
知ることさえ出来ないアルクェスのプロンプトのように。
この恐怖は誰にも理解されない。

「ノクト……?」

怯えたように、不安そうに一歩、また一歩とノクティスから距離を取ろうと後ずさるプロンプトの腕を無理やり掴み、ひとつしかないダブルベッドへと放り投げる。
綺麗に整えられたベッドに叩きつけられ、ようやく現状を欠片なりと理解したプロンプトは歩み寄るノクティスにひっ、と喉をひきつらせると、逃げるようにずりずりと後退した。
それが自分への拒否反応のように思え、唇を歪める。
ほらみろ、彼は逃げる気だったのだ。
新しい色に惑わされ、己を捨てて、あの男の元へ行く気だったのだ。
プロンプトをシーツの上に押し倒し、その服に手を掛ける。
やめようよノクトと震える声が、ゆらゆらと泣き出しそうに揺れるキングスブルーがたまらなく愛おしかった。
そうだ、これは自分のものだ。あの男になど渡すものか──絶対に。
ゆるりと口元に弧を描くと、ノクティスはぶちぶちとボタンが弾け飛ぶのも無視してその服を剥ぎ取る。
罪悪感などなかった。
だってこれは自分のものなのだから。
やめてやめてとプロンプトが声を上げ、泣く。その声さえ愛おしくて……なのにどこか苦しくて元凶となる彼の口を自分のそれで覆った。
たくさん痕を付けておこう。ゆっくりとプロンプトの体を撫で回しながら、ノクティスは決める。
誰が見ても一目で分かるように。彼の体に自分の名を刻むように。

後から省みれば理性など働いてはいない状況だった。
ただただ己を安心させようと、それだけだった。
傷付ける気など毛頭なかった。

……それが、ただの言い訳にすぎなかったとしても。

 

***

 

「……アルクェスはファルテスの目の色を認識することで運命の相手を見分けられます。ただしこれは類似の色を持つファルテスならば全てがその対象となり得るのです」

カッ、カッ、と音を立て教師がチョークで黒板に矢印を描き足していく。
あぁ、今回は運命の相手に関する授業だったか。
眠い目を擦りながら、ノクティスはぼんやりと黒板を見つめた。
アルクェスとファルテス、それからそのどちらでもない人間を分けて行われる授業。
毎度その授業は密かに──特にアルクェスとファルテスという対象者の間では──人気のものではあったが、なにぶんファルテスとして生まれ落ちたものの、その特性に興味関心の薄いノクティスにしてみれば眠気ばかりを誘う時間でしかなかった。
くわりと小さく欠伸が洩れる。

「なのでアルクェスには我々ファルテスのように《運命の相手》という確固たる実感が伴いません。ただその目に色を入れられる機会は一度きりなのです。我々ファルテスのように誰にでも色を与えることが出来るのとは対照的に」

描き足した矢印の上に今度は大きなバツが足されていく。
じゃあ、と授業に積極的な生徒が手を挙げた。

「もし、自分の運命の相手であるアルクェスが、すでに他の誰かの目の色を貰っていたらどうしたらいいんですか?」

良い質問ですね、と教師が眉を下げ、苦笑した。
最近、ニュースで取り上げられた事件を知っていますか?
新聞の一部をコピーしたであろうプリントを一番前の席の生徒に配りながら、教師は紙面に載っている事件を説明し始める。
前から回ってきたそれにノクティスも目を通す。
その見出しには大きく、ファルテスがアルクェスの目を傷害した事件について書かれていた。

「アルクェスが一度その目を染めてしまえば二度と元に戻すことも、別の色に染め直すことも出来ません。そして染めた側であるファルテスに生まれる独占欲も同じように消えることはありません」

つまり解消の出来ない婚姻制度のようなものです。
教師の説明に、昔どこかの国で派生した宗教の話に似ているなとノクティスはうとうととしながら考える。

「別の誰かと結ばれてしまった相手は、たとえ後に自分の運命の相手だと気付いてもどうしようもないのです。ファルテスだけが抱く葛藤……だからこそ、このような悲劇も起きてしまう」

どうせ自分の色を与えられないのなら、あのファルテスの色を宿すしかないのならば、それならいっそのこと色も奴も見えなくなってしまえば──。
そうして似た事件が過去に何度も起きていることを記事は伝えており、早急な法的対応を求めていた。

「でも、二つ以上の色がわからないアルクェスもいるんですよね? その場合は運命の相手もふたり以上いるってことですか?」
「そうなりますね。ごく少数ですがそういったアルクェスと対のファルテスが報告されています。ただこれは本当に数パーセントのことなのか、単に見逃されているだけで全てのアルクェスとファルテスに言える特徴なのか、今の研究では分かっていません」

前回の授業を覚えていますか?
教師がノートを前のページへめくるよう促し、ノクティスも遅れて他の生徒同様戻ってみせる。

「アルクェスは特定の色を認識することが出来ません。『見えない』のではなく『認識が出来ない』のです」

そう言えば、そういう文をマーカーで引いたなと指でなぞって探すと確かにその記載に蛍光色の線と要テストの文字が残されていた。
アルクェスは色を認識できないためファルテスの目の色で確認するまでは自身でも何色が見えていないのか分からないのだと。

「この色が見えないのだとアルクェスはファルテスの目を介してでしか理解出来ないのです。逆に言えば、もし認識できない色を持つファルテスと出逢わなければ、そのアルクェスはその色が認識出来ないのだと知らないままに一生を終えるのです。……もうひとりの運命の相手と出逢うことなく生を全うしてしまうとも言えますね」

あるひとつの色だけを認識出来ないというアルクェスが、偶然認識できない他色を宿すファルテスと出逢っていないだけなのか。
真にその一色だけを認識できないだけなのか。
運命の相手は本当にひとりなのか、はたまた二人なのか、それ以上なのか。
それは現在において、誰にも分からないことなのだ。

「私から言えることは、ファルテスには強い理性が求められる種だということです。ファルテスは自分の色を与えた者、もしくは運命の相手という者に対して異常な独占欲、執着心を抱きます。それは本能的な行動であり、どうしようもない感情なのです」

ですが、と教師は言葉を切る。
ピンと張りつめる空気。
それにノクティスはふと顔を上げた。

──あのとき、あの教師はなんと言っただろうか。

 

****

 

ギシギシとベッドのスプリングが音を立ててしなる。
その上でノクティスはプロンプトをうつ伏せにし、その片腕を掴んだまま獣のように腰を揺さぶっていた。

「…ア、ぅ、あっ…ぁァ、ひァアアッ…!」

ぶるぶると体を震わせ、プロンプトが達する。
しかし、それを示す精液はおそらく出てはいないだろう。
ノクティスは締め付けられる快感に腰の動きを緩ませながらそう思った。
いつからだろう。それが噴き出すのを止め、じわりと先を濡らすだけになっていたのは。その目が虚ろになり、自分を映さなくなったのは。
プロンプトが意識を飛ばすのも、そう遠いことではないのかもしれない。
そう頭の隅で分かってはいても、ノクティスはこの行為を止めることは出来なかった。
大きく口を開き、プロンプトの肩に歯を立てる。歯形が付くほど強く力を込め、十分に痕が残ったくらいでそれに舌を伸ばし、鬱血を残そうと吸いついた。
プロンプトはひぐりと大きく体を跳ねさせると、虚ろな目のままぐしゃぐしゃになったシーツの上を這って逃げようとする。
逃げるな──いや、逃がすものか。
掴んでいた腕を引き寄せ、一気に腰を突き付ける。
高い悲鳴を上げ、プロンプトは体をしならせるとガクガクと下肢を痙攣させた。

「プロンプト…」

背中のあちこちに散らせた赤い鬱血。噛み痕。それでもまだ全然足りないという感情にノクティスは唇を噛む。
どうしたらこの焦燥は消える。この不安は、この恐怖は。
腕を掴んでいた手を放し、その手で首を撫で回す。それからするすると頬をすべらせ、プロンプトの目元に指を這わせながら考えた。
この目が全て悪いのではないだろうか。
ふとノクティスは思いつく。
この目があの色を映すから、だからその心が惹かれる。奪われる。
ならば、いっそ、いっそのこと──この目さえ見えなくなれば、そうすれば。
それはこれ以上ない程の妙案に思えた。これで全てが解決すると。
ノクティスはそっとプロンプトの目を覆うと、傍から見ればぞっとするほど暗い表情でわらった。
そう、たとえこのキングスブルーに自分が映らなくとも、それでこの先の安心を得られるならば。

ノクティスの意思に応えるよう、指先にきらきらと魔法の光が纏わりつく。そこからじくりと熱が生まれた、その時だった。

「──ねぇ、もっと丁寧に扱ってよ」

じゃないと壊れちゃうでしょ。
ベッドの真横。そこから落とされた突然の男の声にびくりと動きが止まる。
足音も気配も無かった空間で。
信じられない、とそう思いつつもゆっくりと、油のきれたブリキのような緩慢さで目を向ければ、そこには聞き間違えでもなんでもない、胡散臭い笑みを浮かべた男──アーデン──が佇んでいた。

「……なんで、ここに、」
「ん? どうやって入ってきたかって?」

あそこ、君のお友達が通してくれたけど。
男の飄々とした口調に呆然としながらも指を差された方向……入り口をぎこちなく見やれば、いつの間にかイグニスの扉を叩く音や自分を呼ぶ声は無くなっており。
まるで時間が止まったかのように、夜更けとは言えシン…と不自然なくらい静まり返った周囲は言い様のない違和感を感じさせ、ノクティスの背に冷たいものが滑り落ちた。

「……アンタ、一体なにをした」
「なにって……ハハッ。したのは俺じゃなくてキミの方でしょ?」

王子様。ぎしり、とベッドに腰掛け、そう挑発するような言葉を口にすると、アーデンはプロンプトの口端から伝う唾液を指で拭い取る。
ぴくりとプロンプトが身じろぎをした。
あぁ、かわいそうに、と男は肩をすくめる。

「相手を間違えるとこうなるんだって、この子もようやく学んだかな」
「ッ、こいつに、触るな…!」

男の腕を振り払う。
そうすれば男はおぉ、こわいこわいとその腕を引っ込め、べろりと唾液で濡れた指に舌を伸ばした。それさえも自分を煽っているように思え、睨み付けると勘違いしないでね、と男がわらう。

「いっぱしに所有権を主張したいんだろうけど、この子は最初から君のものじゃない」
「…っ、ふざけんな! こいつはオレのもんだ! オレだけのアルクェスだッ!」
「キミだけの、ねぇ? 本当になにも知らないんだ」

いや、正しくは知らないふりをしてる、かなぁ? 男は笑みを深くする。

「ファルテスの本能に呑まれた王子様が本当に分からない? まぁ、それでもいいけど。でもその子の目を傷つけるのはいただけないなぁ」

──だってそれは俺のものでもあるんだから。

男がうっそりと口端を上げる。ぞくりと背筋が震えた。男の目がノクティスを射抜く。ヘーゼル色の目だけが笑わず、敵意を表すように。

「本能に酔いすぎだよ、王子。奪うなら全てを奪う覚悟でやらないと」

目だけ、なんて言わずその全てを奪う気で。そう、その無力な手に力を宿して、無知な頭に知恵を付けて。俺に掠め取られないように万全の準備をして。例えば巨神様の力を手に入れるのもその一手かな?

「じゃないと張り合いがないだろう?」

借り物だらけの王子様。男は嫌味のようにそう口にすると、ゆるく首を傾げた。